インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスとは?役割と関係性を解説
営業の分業化が進む背景と「The Model」とは
営業組織では近年、効率化と顧客満足度の両立を目的に「分業体制」への移行が進んでいます。背景には、購買行動のデジタル化とSaaSビジネスの拡大があります。かつては一人の営業が新規開拓から受注・アフターフォローまでを担当していましたが、現在はそれぞれのフェーズを専門部門が担う体制が主流になりつつあります。その代表的な仕組みが、Salesforce社が提唱した「The Model(ザ・モデル)」です。
ここではその考え方と、分業化が進む理由を整理します。
営業分業が進む背景:購買行動の変化と情報の非対称性の解消
現代の顧客は、営業担当と会う前に自ら情報を収集し、比較検討を行うようになりました。従来の訪問型営業ではリードを獲得する前に機会を逃すリスクが高まっています。この変化を受け、見込み顧客との最初の接点を担う「インサイドセールス」が重要になりました。オンライン面談やメール・電話を通じて信頼関係を築き、フィールドセールスが商談しやすい状態へと導く役割です。顧客との接点を分業化することで、スピードと対応品質を両立できるようになりました。
h3 The Model(ザ・モデル)の基本構造
The Modelは、営業プロセスをマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4段階に分け、各部門が連携して顧客を獲得・維持する体制です。マーケティングがリードを獲得し、インサイドセールスが商談機会を創出。フィールドセールスが提案・クロージングを行い、契約後はカスタマーサクセスが活用支援を行うという流れです。各部門がCRMなどのシステムを通じてデータを共有することで、営業活動全体の効率と再現性を高めます。
分業体制がもたらす効果と導入の広がり
分業化の目的は、単に業務負担を分けることではなく、顧客体験の一貫性を高めることにあります。部門ごとに得意領域を活かすことで、生産性が上がり、顧客満足度も向上します。特にSaaS企業やBtoBビジネスでは、契約後の利用支援や継続率の向上が収益に直結するため、The Modelの導入効果が大きいとされています。営業の分業化は、効率と顧客志向を両立する新しい営業モデルとして、今後さらに拡大が見込まれます。
インサイドセールスとは?リード育成の中核を担う役割
インサイドセールスは、見込み顧客と企業をつなぐ“営業の起点”となる存在です。マーケティングが獲得したリードを商談につなげるために、電話やメール、オンライン商談ツールなどを活用して非対面でアプローチを行います。従来の営業スタイルでは訪問数や移動時間が成果を左右していましたが、インサイドセールスの登場により、顧客対応のスピードと質が大きく向上しました。
ここでは、役割・具体的な業務内容・他部門との連携の3つの観点から解説します。
見込み顧客の興味を高める「リードナーチャリング」
インサイドセールスの主なミッションは、マーケティングが獲得したリードを「商談できる状態」まで育成することです。展示会や資料請求、ウェビナー参加などで接点を持った見込み顧客は、必ずしも購入意欲が高いわけではありません。メール配信や電話フォローを通じて課題や興味度を把握し、適切なタイミングで商談化する「リードナーチャリング(育成)」が成果の鍵を握ります。この段階で関係性を築くことで、フィールドセールスが提案しやすい状況を作ることができます。
デジタルツールを活用した効率的な営業活動
インサイドセールスでは、CRMやSFA、MA(マーケティングオートメーション)などのツールを組み合わせて顧客データを管理します。たとえば、過去の接触履歴や資料閲覧状況を可視化することで、どのリードが商談化しやすいかを判断できます。さらに、チャットツールやオンラインミーティングを併用することで、少人数でも多くの顧客にアプローチできるようになります。属人的な勘ではなく、データに基づいた営業判断ができる点が大きな強みです。
フィールドセールスとの連携が成果を左右する
インサイドセールスが創出した商談は、最終的にフィールドセールスへと引き継がれます。ここで重要なのは、リードの「質」と「温度感」を正確に共有することです。引き継ぎが曖昧なままだと、営業現場での商談が空振りになるリスクがあります。そのため、SFA上で商談条件や顧客課題を共有し、両部門が同じ基準でリードを評価する仕組みづくりが欠かせません。リード定義やKPI(例:架電数、商談化率)を統一することで、チーム全体の成果が安定します。
フィールドセールスとは?提案・クロージングを担う営業
フィールドセールスは、インサイドセールスが創出した商談機会を受け取り、顧客と直接コミュニケーションを取りながら契約まで導く役割を担います。BtoB営業の中心的存在であり、顧客の課題を深く理解し、最適なソリューションを提案することが求められます。
ここでは、提案型営業の重要性、インサイドセールスとの連携方法、そして成約率を高めるためのポイントを整理します。
課題解決型の提案で信頼を獲得する
フィールドセールスの基本は「顧客理解」にあります。単なる商品説明ではなく、顧客の業界動向やビジネス課題を把握し、その課題解決に直結する提案を行うことが重要です。ヒアリングでは、課題の背景・影響範囲・理想の状態を引き出し、具体的な解決策へと落とし込む力が求められます。SaaSやIT商材では、製品の機能だけでなく、導入後の運用イメージまで説明できることが信頼構築の鍵となります。提案型営業によって、顧客との関係は単なる売り手と買い手から、ビジネスパートナーへと進化します。
インサイドセールスとの連携で商談の質を高める
フィールドセールスは、インサイドセールスが引き継いだリードを商談化し、受注につなげます。この連携がスムーズに行われないと、せっかくの見込み顧客が離れてしまう可能性があります。重要なのは、商談前に「リードの温度感」「課題」「意思決定プロセス」などを正確に共有することです。インサイドセールスからの引き継ぎ情報をもとに、訪問・オンライン商談の目的を明確化し、効率的な提案につなげます。また、商談後は結果をフィードバックし、インサイドセールスがリードの傾向を学べるようにすることで、組織全体の精度が高まります。
データ活用で成約率を向上させる
成約率を高めるには、経験や勘に頼らず、データに基づく営業活動が欠かせません。SFAやCRMに蓄積された商談履歴を分析し、受注傾向や失注要因を把握することで、提案の改善につなげられます。例えば、商談ステージごとの滞留期間を可視化すれば、課題の早期発見が可能です。また、インサイドセールスやカスタマーサクセスとデータを共有することで、見込み顧客の特性をより深く理解できます。データドリブンな営業文化を根付かせることで、個人依存を防ぎ、組織全体で成果を上げる体制が整います。
カスタマーサクセスとは?顧客満足と継続率の最大化
カスタマーサクセスは、契約後の顧客が製品やサービスを最大限に活用できるよう支援し、成果の実現を後押しする役割を担います。従来の「カスタマーサポート」が問題解決を目的とした“受け身の対応”であるのに対し、カスタマーサクセスは“能動的に成功へ導く”活動です。BtoB企業やサブスクリプション型ビジネスにおいては、顧客の継続利用が収益に直結するため、その重要性が急速に高まっています。
ここでは、カスタマーサクセスの目的と業務内容、フィールドセールスとの連携のポイントを解説します。
導入支援から利用定着までを支える役割
カスタマーサクセスの最初の仕事は、製品導入後のオンボーディング支援です。顧客がスムーズに操作・運用できるようサポートし、早期に価値を実感してもらうことが重要です。導入段階でつまずくと、顧客の不満や離脱につながるリスクが高まります。そのため、活用マニュアルの提供や定期的なフォローアップ、利用状況のモニタリングなどを通じて定着を促します。利用が軌道に乗れば、顧客の課題解決事例として新規営業にも活かせる資産となります。
アップセル・クロスセルで顧客価値を拡大
カスタマーサクセスは「解約を防ぐ」だけでなく、顧客の成果を拡大させることでLTV(顧客生涯価値)を高める役割も担います。顧客の利用状況を分析し、追加機能の提案や上位プランへのアップセルを行うことで、双方にメリットのある成長関係を築けます。定期的なビジネスレビューや活用レポートを通じて成功事例を共有し、信頼を深めることが継続契約につながります。このように、カスタマーサクセスは収益を持続的に伸ばすための“攻めのポジション”として位置付けられています。
フィールドセールスとの情報共有が鍵となる
契約を締結した時点で営業活動が終わるわけではありません。カスタマーサクセスが成果を上げるには、フィールドセールスとの情報共有が不可欠です。特に、契約前にヒアリングした課題や期待値、導入の目的などを正確に引き継ぐことが重要です。顧客が何をゴールとしているかを把握していなければ、適切な支援ができません。また、サクセス活動の結果をフィードバックすることで、フィールドセールスが再提案やアップセルのタイミングを判断しやすくなります。営業とサクセスが連携することで、顧客体験の質が飛躍的に向上します。
3部門が連携して成果を上げるためのポイント
インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの3部門は、それぞれ異なる業務を担いながらも、営業組織全体の成果を左右する密接な関係にあります。いずれか一つの部門が孤立すると、顧客体験が分断され、成果につながりにくくなります。
インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの3部門は、それぞれ異なる業務を担いながらも、営業組織全体の成果を左右する密接な関係にあります。いずれか一つの部門が孤立すると、顧客体験が分断され、成果につながりにくくなります。
ここでは、3部門が一体となって成果を最大化するために欠かせない3つのポイントを解説します。
情報共有とKPIの一貫性を保つ
連携を強化するうえで最も重要なのが、部門間の情報共有です。商談履歴や顧客の課題、導入目的などの情報が共有されていなければ、顧客対応に一貫性が生まれません。SFAやCRMを活用し、すべての顧客データを一元管理することで、誰が対応しても同じ水準のコミュニケーションが取れるようになります。
また、各部門が個別のKPIで動くと連携が形骸化しがちです。商談化率、受注率、継続率といった指標を全体のゴールに紐づけ、「部門単体の成果」ではなく「組織全体での成果」を意識したKPI設計を行うことが重要です。
ツールとデータを活用した連携基盤の構築
データドリブンな営業体制を支えるためには、ツールの活用が欠かせません。マーケティングオートメーション(MA)でリード情報を蓄積し、SFAで商談状況を管理、カスタマーサクセスツールで利用状況を追跡するなど、フェーズごとに最適なシステムを連携させます。これにより、見込み顧客がどの段階にいるのか、どの施策が成果を上げているのかを客観的に把握できます。データの透明性が高まれば、各部門が共通の理解を持ち、顧客へのアプローチに無駄がなくなります。
顧客中心の組織文化を醸成する
3部門が連携して成果を出すためには、「顧客を中心に考える文化」を根付かせることが欠かせません。営業活動の目的を「売上」ではなく「顧客の成功」と捉えることで、部門間の利害を超えて連携が強化されます。たとえば、フィールドセールスが契約を急ぐよりも、カスタマーサクセスが長期的な活用を支援する方が結果的にLTVが高まるケースもあります。定期的な部門横断ミーティングを設け、顧客の成功事例や課題を共有することで、全員が同じ方向を向いて行動できるようになります。顧客視点を軸に据えることが、分業体制の本質的な成功につながります。
このように、3部門の連携には情報共有・データ基盤・文化醸成の3要素が欠かせません。それぞれが独立した役割を持ちながらも、共通の目的を持って動くことで、営業組織全体のパフォーマンスは飛躍的に高まります。
まとめ|分業と連携で顧客体験を最適化する
営業の分業化は、単に業務を細分化する取り組みではなく、顧客体験を一貫して最適化するための戦略です。インサイドセールスがリードを育成し、フィールドセールスが課題解決型の提案で信頼を築き、カスタマーサクセスが成果実現を支援する。この流れがスムーズに機能することで、顧客は導入前から利用後まで安心して価値を感じられます。
また、各部門がデータを共有し、同じ指標で連携することで、営業の効率化と顧客満足度の両立が可能になります。分業体制を成功に導く鍵は「顧客中心の視点」と「部門を超えた連携」。この2つを軸に据えた組織こそが、持続的に成果を出し続ける営業チームといえるでしょう。
